土日を挟んで月曜日。

高体連が終わり、クラスメート全員が顔を揃えている。

その中には一昨日の彼らもいる。

昼休みになると、あたしは何も見なかったことにして明らかに顔を曇らせている澪に話しかけた。


「澪どした?顔暗いぞ~。まさか、まだ野球部の惜敗を引きずってくれちゃってる?だとしたら申し訳な...」

「違うの」


澪は全力で否定して来た。

ここまではっきり言われると、監督に鋼メンタルとも評されるあたしでもさすがにちょっと傷付く。


「じゃ、なに?」


分かってるのにわざわざ聞くなんて、自分でも嫌な子だなって思うけど、こうするしかなかった。

だって、澪はあたしの気持ちなんかこれっぽっちも勘づいてないから。

ほんと、澪は鈍感の極みだよ。


「ここじゃ話せない。音楽準備室に来てもらってもいい?」

「まぁ、いいけど」


澪の視線の先を見ると、そこには魁がいた。

その時点で何かあったことはバレバレだ。

恋愛偏差値普通レベル以上だったら、分かると思う。

他の子にバレないといいけど。

そこそこあいつ、人気だから。

バレンタインにチョコを5こもらって鼻の下伸ばしてるようなやつだから。

調子に乗らせない方がいいんだから。


「爽?」

「あ、ごめんごめん。行こ」


魁のことを考えてたら、澪が立ち上がったのに気付かなかった。

ったく、しっかりしろ、あたし。

動揺するなよ、あたし。

自分にそう言い聞かせた。