「そこ、1番大事なのに、山本に言われちゃ困る」


わたしが着けていたピンクのリップで薄く色づいた唇を動かすさつまくん。

さっきので答えは決まったようなものだけど、最後まで聞こう。

聞かせてもらいたい。


「山本澪」

「はい」

「オレは山本のことが好きだ。...大好きだ。オレと付き合ってほしい」


わたしはふふっと笑い、瞳の奥が熱くなったのを誤魔化すために咄嗟に抱きついた。


「へ~、意外にグイグイ来るのな」

「違う。ちょっと貸してもらいたいだけ。わたし、さつまくんといると泣いてばっかで...もう泣き顔見せたくないから」


わたしはさつまくんの胸に額を押し当てて涙を流した。

さつまくんのTシャツに染み込んだ涙は、わたしとさつまくんの想いが交わり合って1つになった証としてここに留まっていてほしいと思った。

たとえ乾いてしまったとしても、この想いは乾いたりしない。

そう思える。

今なら、そう、強く。


「山本の泣き顔、オレ嫌いじゃないけど」

「わたしが嫌なの。黙って付き合って」

「ったく...」