しばらく彼女のことを思い出していると、音が止んだ。

吹奏楽部も練習は終わりのよう。

待っていてもいいけど、話したこともない女に待たれていたら嫌だと思うし、自分がもし逆の立場だったら引くだろうなと思い、私は下駄箱に手を伸ばした。

今のうちに帰れば雨に降られることもないだろうし、早く帰ろう。

そう思った、その時だった。


――ボタッ。

――ボタッボタッボタッ...。

――ザーーーッ!


勢い良く雨が演奏を始めた。

タクトを振っていないのになぜ?

誰もチューニングしてないのにどうして?

こんな雑音誰も望んでいないのに...。

私は雨を恨めしく思いながら、リュックを下ろし、中身をあさり始めた。


折り畳み傘どこかな?

確か今朝入れてきたはず...。


しかし、ガサゴソあさってもどこにも見当たらなかった。

天気予報で午後からは降水確率70%って言ってたから持っていこうって思ったはずだったのに。

あぁ、ツイてないなぁ...。


私ははぁと大きなため息をつき、屋根の先からポタポタと落ちる雨粒を見つめた。


借りられるか分からないけど、職員室に行くしかないか。

恥かいてもびしょ濡れになるよりはマシだ。

行くしかないか...。