「私は音楽をやってる人が好きなんです」

「えっ?」


自分の耳を疑った。


深月さんが喋った?

しかも、ちゃんと答えたよね?

音楽やってる人が好き?

えっ?

えっ...?

嘘...

ってことは...

どういうこと?

脳内で情報が錯綜しているというのに深月さんはさらに増やしていく。


「野球部の応援にも行ってる吹奏楽部が羨ましかったんです。この前の高体連の時の演奏どうでした?」

「あ、えっと...カッコ良かったです」

「ですよね?特にトランペットが。私あのどんなものも貫くような真っ直ぐな音が好きなんです。実は今度のコンクールも生徒会代表で見に行けることになって楽しみにしてるんです」

「そ、そそうですか」


好きなことになると饒舌になるヲタクタイプか。

しかも、音楽...。

そして、気になるワード、"吹奏楽部"、"トランペット"。

これは澪に聞くしかない。

ここまで聞いたら探りたくなっちゃうよ。

深月さんが運命を感じている相手。

恐らくそれはトランペット奏者。

ここまで情報が出揃えば、あとはもう澪に聞くのみ。

そして、風くんのことはなんとも思っていないようだと伝えよう。

うん、それで良し。