「う~ん...」


正直、ドキドキもキュンもふわっとした浮遊感も熱っぽさは感じなかった。

だけど、心の隙間に優しく風が吹いて安心感が生まれたり、あの笑顔を思い浮かべると、ほのかにミントのような爽快感を感じた。

恋人なのか、夫婦なのか。

その違いに似ている気がした。

デートはスリリングでもいいけど、結婚には安心感を求めた方が良いみたいなことを、私の母はお見合い特番を見ては言っていたのを思い出した。

その理論で行くと、なんとなく似た者同士の私と朝吹くんは夫婦のような関係に近いように思えた。


「ふ、夫婦...。私、何考えてるんだろう?」


推薦を受ける大学の小論文を書きながら、私は変なことを考えていた。

付き合ってもいないのに、結婚して夫婦なんて...。

一旦このことは忘れよう。

私は自分にそう言い聞かせ、再び原稿用紙にペンを走らせた。