青い夏の、わすれもの。

「澪ちゃん、覚えてる?」

「何?」


ウミガメを見ている時に風くんが突如質問をしてきた。


「澪ちゃん、中1の自己紹介で自分を生き物に例えると、亀ですって答えたんだよ。わたしはトロくてマイペースだから、亀に似てるんです、わたしは亀なんですって」

「そんなこと言ったっけ?」

「うん、言ってたよ。覚えてない?」


全くと言って良いほど、わたしは覚えていなかった。

自分も覚えていないことを風くんは覚えている。

それは嬉しいことなのだけど、今は素直に喜べない。

なんだろう...。

胸の奥がムカムカする...。

湧いてくる感情がマグマのように熱くてどろりとしている。

自分に対する怒りだろうか。

どうしてこんな感情になるのだろうか。

わたしは知りたかった。

けど、知る術もなかった。


「澪ちゃん?」


風くんに名前を呼ばれて我に返った。

亀に背を向けながら、わたしは道の真ん中で立ち止まっていた。


「どうかした?気分でも悪い?」


悪いどころか最悪。

正直もう...帰りたい。

言いたくはないけど、この場をセッティングした爽に対してもイライラしてる。

でも、1番は...自分への怒りだ。

何もしてこなかった自分への怒り...。

風くんを知ろうとせず、

風くんに知ってもらおうともせず、

平行線を辿ってきた自分に心底腹が立っていた。

どうして努力しなかったんだろう。

初恋を実らせたくなかったの?

昔の自分に聞きたい。

あなたは今まで何をしてたのって。

それでも明確な答えが帰ってくるとは限らないけど...。

わたしはひとまず「大丈夫」と答えて先へ進んだ。

ここまで来ればもうすぐだ。

わたしの"好き"に会いにいく。