青い夏の、わすれもの。

罪悪感が胸を覆い、呼吸さえもままならない中、風くんとの2人きりの時間がやって来てしまった。


「澪ちゃんと2人なんて久しぶりだね。澪ちゃんは何が好き?澪ちゃんが行きたいところから回っていこう」

「あ...うん。そうだなぁ、何がいいかな...」


優しい言葉をかけられる度に罪悪感に襲われる。

故に本音も飲み込んでしまう。

わたしは到底"ペンギンが見たい"なんて言えず、順番通りに見ようと提案した。

風くんはさっきまでの研究者ペースを崩し、わたしのペースに合わせてくれた。

といっても、わたし自身もいつもよりスローペースで見ているから、どっちもどっちだ。

"お互いがお互いに歩み寄ってる優しい関係"なんてきれいにまとめられたらいいけど、
実際はただ"言いたいことも言えない窮屈な関係"だ。

こんなにもぎこちないのは、わたしが風くんを一方的に想ってしまっているから。

勝手に自分の理想像に重ね合わせて風くんを見ていた。

わたしは今まで妄想に逃げていたから風くんの本質を知ることが出来なかったんだ。

どことなくお互いに遠慮して歯車が噛み合わないのは、わたしが風くんを知らないから。

初恋に落ちたあの日で時が止まっているから、なんだ。

サッカーの練習も、部活中に3階のベランダから片手間に覗いていただけで、グランドに足を踏み入れたことさえなかった。

風くんと同じクラスにいても、わたしは廊下側の1番前の席にいて、窓際の1番後ろの席にいる風くんを振り返ることもしなかった。


好きになった...。

掃除を手伝ってくれたあの日、わたしは確かに恋に落ちた...。


けど、風くんは...違ったんだ。

わたしを助けたのは、もともと誰にでも優しく接する風くんの性格故のことだったのだ。

そんな単純なことにわたしは今の今まで全く気付けなかった。

自分にだけ向けられた優しさだと勘違いしていた。

彼の行動の理由に"山本澪だから"なんてのはなかったんだ。