青い夏の、わすれもの。

「山本」

「何でしょう」

「なんもないのはオレも一緒。だから、そんなに心配しなくてもいい。オレ以外にだってごまんといるはずだ。
ただ、迷って何もしないのは間違ってる。
迷ってる暇があったらとにかく勉強して部活もやって、可能性とか見聞を広めた方がいい。オレはそう思う」


わたしは大きく3回頷いた。

さつまくんの言葉を咀嚼して飲み込んだ。

その言葉は栄養とエネルギーになって全身に巡る。

わたしの中に何かが芽生えた。

その何かはきっと...踏み出す勇気、だ。

なんでもいい。

どうなってもいいから、

傷付くことを恐れずに前を向いて進んでいくしかない。

改めてそう思えた。

さっきまで心に降り続けていた不安に滲んだ黒い雨は、いつしか止んで透明な水に変わり、安らぎを与える泉になっていた。


「さつまくん、わたし...頑張る。自分なりに頑張ってみる。可能性を広げるために色んなことに一生懸命になる」

「りょーかい」


さつまくんはわたしの顔を見てくすくすと笑った。

わたしの清々しい顔がそんなにおかしかったのだろうか?

それでもいい。

この心を晴れにしてくれたさつまくんにわたしは心の中でありがとうを呟いた。

明日からまた頑張れる。

そう思えた。