青い夏の、わすれもの。

「ごめんなさい。私長々と喋ってしまって」


私の言葉に律くんは首を横に振った。


「どうして謝るの?深月さんが謝る理由なんてないよ。マナティの話聞けて良かった。海の生き物に興味を持てたよ。ありがとう」

「それなら良かったです」


私が微笑みかけると、律くんも相好を崩してくれた。

けど、どこか寂しげで、何かを...いや、誰かを捜しているように見えた。

何か、ではない。

律くんの興味はこの水族館にはないから。

だから、答えは"誰か"の方だ。

その誰か、は...

もしかして......。


「他におすすめの生き物はいる?」


私がある人の顔を脳裏に浮かび上がらせたところで、律くんは口を挟んだ。


「あ、はい。あとはですね...」


私は分かりやすい生き物が良いかなと思い、ペンギンコーナーに向かうことにした。

だけどもう頭の中は別のことでいっぱいだった。

もし、私の想像通りなら、私は一体どうすれば良いのだろう。

私はどうしたいのだろう。

今まで何をしてくれば良かったのだろう。


脳裏にも霧がかかり、思考が遮られる。

胸には今にもパンッと弾けそうなほどに膨らむ赤い風船がある。

あぁ、この気持ちをどこへ持っていけばいいの?

私は自分の身体を蝕む全ての毒を振り払うように早足で歩いた。