青い夏の、わすれもの。

「生徒会副会長の深月華さんでしょ?」

「うん。この前2人で仲良さそうに歩いてるの見ちゃったんだよね。お似合い...だったなぁ」


サッカー部エースで成績優秀な風くんと生徒会副会長の深月さん。

確かに釣り合ってはいる。

けど、そんなの関係ない。

表面上だけだ。

性格とか中身とかが上手く合うってことではないんだから、澪にだって勝算はある。

ってか、勝ってもらわなきゃ困る。

これは澪の問題でもあり、あたしの問題でもあるんだ。

あたしは力を込めて言った。


「澪、まだ諦めるな。あたしは何が何でも澪の味方だから。副会長だから何よ!そんな肩書きがあろうが無かろうが関係ない。澪の方が何倍、何十...いや、何万倍も優しくていいこなんだから!」

「えっ?ちょ、ちょっとどうしたの爽?」


こうなったら何がなんでも澪と風くんをくっつける。

よし、決めた。

部活も残すところ、引退試合のみ。

大学受験もなく、AOで東京の美容専門学校に行くことが決まったあたしにはもう、これしかやることがない。

最後まで残してしまった宿題を今から解こう。

青春の忘れ物を取りに戻ろう。

今ならまだ、

まだ間に合うから。

誰にも解かれる前に、仕上げよう。

あたしに正に働く答えを見つけよう。


「あたし、澪に応援してもらった分、いやそれ以上に全力応援するから」


澪はぽかんとしていたけど、あたしはもう決めたんだ。

さて、作戦を立てるとしますか。

あたしは初めて音楽室から聞こえる音に叱咤激励されている気分になり、上機嫌で普段使っていない頭を捻りまくったのだった。