青い夏の、わすれもの。

「期待させるのも良くないよ。長く待たせておいてごめんなさいじゃ、むしろそっちの方が失礼だよ」

「確かに...」


そうそう、そうだよ。

だから、澪断って。

一緒に着いて行ってあげるから断って。

お願い...

お願いだよ、澪。

この片想い...

叶わないって心から思った時

終わらせるのは

あたし自身がいいんだよ。

だから、お願い。

あたしがそんなことを思っていると、澪はまた深刻な顔をした。


「澪?」

「自分が好きな人と自分を好きな人、どっちを選べば幸せになれるのかな?」

「ずいぶん贅沢な悩みだね」


遂にイヤミが出てしまった。

鈍感な澪じゃなきゃ、キレられてたと思う。

澪の性格に甘えて、時に利用して...。

やっぱヤな子だな、あたし。

何度だって、そう思う。

そして、自信を失くしてくんだ。


「あたしはさ、自分が好きな人じゃなきゃ絶対嫌だけど」

「そっか...」


澪はため息をついた。

じめっとした音楽室の湿度がさらに上がった気がした。


「でも、風くんはきっと...」