青い夏の、わすれもの。

昔はお互いの家を行き来してはマンガを読んだりゲームしたりして遊んでいたんだけど、それも中1の春頃までだった。

お互い部活を始めて遊ぶ時間が取れなくなったから。

なんて理由は表面上のもので、本当はあたしが遠慮するようになったんだ。

だって魁は男の子であたしは女の子。

年頃の男女が1つ屋根の下にいたら、意識しないでいられると思う?

少なくともあたしは無理だった。

だって、魁のことが好きだったから。

いや、好きだから。

大好きだから。

行ったら求めちゃうんだ。

歯止めが効かなくなりそうで怖かったんだ。

あたしの気持ちを押し付けて無理に押し倒したりしたらどうしようって不安になった。

もし一時的に盛り上がったとしても、その後お互いの気持ちにズレが生じたら、それ以上の関係にはなれないし、元の関係にも戻れない気がした。

安心安全の"幼なじみ"という絶妙な関係。

縮まることも伸びることもないキョリ。

それに甘えてしまっている自分のことは心底嫌いだけど、怖くて踏み出せないんだ。

踏み出してヒビが入ってもう2度と魁の顔を見られなくなったり、魁と話せなくなったりするのがあたしにとっては心臓をもぎとられるのと同じくらい辛いことなんだ。

だから、変化しない関係を望んできた。

近くにいられればそれでいい。

そう思うことにした。

けど、そんな風に思えないあたしもいる。

踏み出したい自分と止まりたい自分。

2人の永瀬爽の間で揺れてるんだ。

そこに突風が吹くこともある。

それでどちらかに振れることもある。


大きく傾いたらそっちがあたしの行くべき道だと思う。

それを見極めるために今日この日を用意した。

だから、お願い。

あたしに道を示して下さい。

どんな運命だって受け止めるから。

お願い、神様。


そう思いながら見上げた空には雲ひとつない青すぎる空が広がっていた。