音楽準備室はいつ来ても狭くてムシムシしていて居心地が悪い。

大会まであと3週間を切り、吹奏楽部の皆さんは昼練を始めたらしいけど、澪と同じ金管楽器担当の人はあんまり練習に来ないんだって。

だから、金管楽器専用のスペースを陣取れるってわけ。

澪は誰も入って来られないように内側から鍵をかけた。


「これで良しっと」


何がいいのか。

全部分かってるんだから、意味ないってのに。

眉間にシワを寄せている澪を見て吹き出しそうになる。

ほんと、あたしって悪趣味だ。

そんなあたしの気なんて露知らず澪は話し出す。


「ねぇ、爽。わたし、どうすればいい?」

「何なに?一体何があったのよ?」


知ってるくせに、ってもう1人の自分の声が脳裏で響く。

それよりも、隣の音楽室から聞こえてくるクラリネットの高音の方が何度も頭を反芻する。

音楽センスが全くなく、音楽自体さほど興味がないあたしには全てが雑音に聞こえる。

その雑音の中、澪は話し続ける。