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 同日同時刻、日本。

 一人の少女が花屋の軒先で花の世話をしていた。
 鉢に植えられた花に順番に水をやると葉っぱに残った水滴が太陽を浴びてキラリと光る。ピンク色のシクラメンは頭を下にして美しく咲き乱れていて、その少女──倉田恵(くらためぐ)は思わず笑みを漏らした。

 恵は十七歳の高校二年生。地方都市の郊外にある自宅は、昔ながらの商店街で花屋を営んでいる。祖父の代にここに花屋を開店し、恵にとっては幼いころからの馴染み客が花を買いに求めに来ることが多い。
 三人姉妹の長女である恵は花が大好きで、放課後は両親の手伝いで店先に立つ事が多かった。ゆくゆくはこの店を継げたら良いな、と勝手に思っている。

「恵ちゃん、今日もお手伝い偉いわねぇ」