一方、人並み外れた魔力の持ち主で優秀な魔術師であるルーエンは転移魔法もお手のもので、転移属性の魔力も潤沢だ。転移属性の魔力が籠められた魔法石は市販されているが、それは手紙などの小物の転移用だ。人が転移するほどの魔力を籠めた魔法石はまず見かけ無いし、あったとしても目玉が飛び出るような値段だろう。それをいとも簡単に作ってあげると言えるのは、ルーエンが優秀な魔術師だからこそだ。

 アルフォークは少しだけ考えてから首を横に振った。

「いや、遠慮しておく」
「なんでさ? 届け物にも使えるから便利だよ?」
「それはそうなのだが……。俺とお前の噂を知らないのか? 部下から聞いた時は驚きのあまり、開いた口が塞がらなかったぞ? ルーから貰った魔法石なんか身に着けてみろ。きっと今にあの噂は真実だったとあること無いこと言い触らされる」
「ああ、あれ。何でだろうね。僕にはマニエルがいるのに」

 身震いするアルフォークを見て、ルーエンは思い当たったようでけらけらと笑った。ちなみに、マニエルとはルーエンの実家が決めた婚約者のことだ。

 アルフォークとルーエンの噂。
 それはアルフォークにとって非常に不本意な出鱈目な話だった。