アルフォークはスーリアから貰った花を執務室に取りに戻ると、大急ぎでルーエンのいる魔術研究所へと向かった。幸い、今度はプリリア王女には会わずに済んだ。
 息を切らせてやっとのことで到着すると、ルーエンは既に到着していたエクリードと紅茶を飲んでいた。

「アル、遅いぞ」

 エクリードがにやにやしながらカップを置く。アルフォークはムッとしたように少し口を尖らせた。

「俺の歩くスピードの問題ではなく、この宮殿が広すぎるのです」
「転移魔法が使えないとこういうとき不便だよねー。転移の魔力を籠めた魔法石を作ってあげようか?」

 ルーエンはいつものようににこにこしながらアルフォークを眺めた。
 転移魔法とはとある場所から別の場所に瞬間移動する魔術だ。非常に便利だが、使えるものは殆どいない。アルフォークは一応、転移属性の魔力が多少はあった。しかし、苦手なのである。何回か試したが、十回やって十回ともが見当違いの場所に転移した。