「それくらい、なんとでもするさ」
「恐れ多すぎて自分にはとてもとても……」

 仏頂面で眉をしかめるアルフォークを見てエクリード殿下はぶぶっと噴き出した。

「酷い顔だ。あの見た目で王女の端くれ。欲しがる男は星の数ほどいる。光栄な話では無いか?」
「星の数ほどいる方々にその大役はお譲りします。私のような小者は謹んで幕外に下がりましょう」
「アルらしい答えだな。国政への欲が無い。それでこそお前だ」

 けらけらと笑っていたエクリード殿下は一通り満足するまで笑うと真剣な顔でアルフォークを見つめた。

「ところで、なぜリアにつかまっていた? なにか別の用事があってあの場にいたのだろう?」

 この王子殿下ははやり頭の回転が速いとアルフォークは舌を巻いた。隠しても無駄だろうと、スーリアに貰った花の事をエクリード殿下に話した。

「なるほど。確かにあの時、アルはサンダードラゴンの攻撃から一瞬で防護壁を作って身を守っていたな? そんな力のある花があるとすれば、本当に凄いことだ。ルーには今から会いに行くのか? 俺も行こう」
「そうしたいところなのですが、肝心の花をプリリア王女殿下に取られてしまいまして……。私の執務室に昨日貰った花があるので取って参ります」
「アル……お前はとことんなってないな。魔獣対策の他にリア対策を考えた方がよいぞ?」
 
 魔獣対策の方が数段簡単だとアルフォークが頭を抱えたのを見て、エクリードはけらけらと笑ったのだった。