アルフォークはすぐにそちらに駆け寄った。草むらの中には一人の少女が倒れていた。全身がすり傷や切り傷で傷付いて血にまみれており、肌は土で薄汚れている。傍らには野いちごを摘んだ籠が落ちており、こぼれ落ちた野いちごが赤い水玉模様を作り出すように散らばっていた。
 
「これは……」

 ──これは、もう駄目かもしれない。 

 そう言いかけて、アルフォークは口を噤んだ。

「俺が治療してやる。アル、どけ」

 騒ぎを聞きつけ、同行した聖魔術師でもあるエクリード第二王子殿下がアルフォークの肩を押して前に出た。エクリードが手をかざすと、少女を鈍い光が包み込んだ。

「治癒は出来たが……この子は早めに家に帰した方がいい」

 エクリードの言葉にアルフォークは無言で頷いた。魔法による治療を施し、一見すれば少女は無傷になっている。しかし、魔法による治癒で傷を癒しても本人の生命力がもたなければそれまでだ。
 治癒を終えたエクリードは辺りをぐるりと見渡して眉をひそめた。