いったい今日のあの防御壁は何だったのだろうか。急な攻撃でアルフォーク自身が防御壁を張る余裕は全く無かった。まわりの人間があの瞬間にあのレベルの防御壁を張れるとも思えない。大喜びしていた様子からも誰かが咄嗟に防御壁を張ったことは考えられない。狐につままれるよう、とはまさにこのことだ。

 防具のプレートアーマーを外し、汗を吸って冷たくなった下着を脱ぐとポケットから包み紙が出てきて、アルフォークは花を包んで入れていたことを思い出した。なんとなくその包み紙を開くと、包み紙の中の花は真っ黒に焼け焦げて灰になっていた。

 アルフォークはハッとして執務室の花瓶を見た。
 花瓶の花は貰った時と少しも変わらぬ様子でまだ美しく咲き続けていた。