スーリアの育てる花はどれも次々と花を咲かせてはなかなか散らない。それに、不思議な事に季節外れの花が大輪を咲かせることも珍しくはなかった。

 育て始めた当初、スーリアは草木の病気や虫で半数近くが駄目になることも覚悟していた。
 前世は花屋の娘だったが売り物の花は問屋から仕入れてきており、実際に一から育てたことは殆どなかったからだ。しかし、そんな心配をよそにスーリアの育てた花は全てが見事に咲いていた。
 そんなこんなで、いつのまにかスーリアが専用に貰った農園の一画は隙間が無いくらいの花の園になっていた。

「スーリア、お前に提案なんだが、その花を売ってみてはどうだ? 花保ちがとても良いし、今の季節には珍しい花も多いから、お客さんにも喜ばれると思うんだ。農園の作物と一緒に売りに行けば手間もないしな」

 父親はスーリアに話しかけながら花の園と化した農園の一画をしげしげと眺めていた。薔薇やマーガレットやチューリップ、ガーベラにハイビスカス、とにかく季節感なく色々な花が咲き乱れていた。
 スーリアはあの事故より以前は花を育てる趣味は無かった。それが、突然やりたいと言い出した園芸でこんなことになるとは父親にとっても驚きだった。

「売れるかしら? じゃあ、もっと私の花畑を広げてもいい?」