「スティフさん、おめでとうございます。すごく格好良かったです」
「ありがとう。スーリアも元気になったようで本当によかった。気になる奴がいたら紹介するから俺に言えよ」

 スーリアもスティフにお祝いを言うと、スティフは優しい目をしてスーリアの頭に手をポンと置いて微笑んだ。気になる奴とは異性として気になる男性という意味であろうが、スーリアはなにぶん随分と後方の席に座っていたのでそんなところまで気を回すほどは見えなかった。スーリアは首を少しかしげる。

「私、団長閣下に助けて貰った御礼を言いに来たんですけど」

 スーリアは一番紹介して欲しい人を名指しして、会えないかとお願いしてみた。いつの間にか団長閣下の所には若い女性が群がっていて、とても近づけそうにない。『団長閣下』と聞いたスティフは申し訳無さそうに眉尻を下げた。

「アルフォーク団長か。あのレディ達を押しのけてここに連れてくるのは難しいな。力になれず申し訳ない」

 スーリアとスティフとメリノの三人は団長のいる方向を眺めて、あまりの人だかりに顔を見合わせて肩をすくめた。
でも、相手は王都の魔法騎士団の団長であり、そうそう会える相手ではない。今御礼を言わないと一生言えないかもしれない。意を決したスーリアは花束を持ち直し、人垣に近づいてみた。