「また追い返されるかもしれないわ」
「何度でも食いつくさ。いいと言ってもらえるまで、ずっと」

 スーリアはふふっと笑った。

 アルフォークはあの日の後、すぐにスーリアの自宅を訪れてスーリアを妻に欲しいとベンに申し出た。それに対し、ベンの返事は「お断わり」だった。
 ベンにとって、末娘のスーリアを涙に濡らさせたアルフォークのことはやはり複雑な心情があるようだ。それに、姉のメリノが家を出てそれほど時間が経っていないこともあり、スーリアを嫁に出すことにはまだ抵抗があるようだった。
 それでもアルフォークは何度も何度もベンの元に通い、許しを請うている。一見、強硬姿勢を見せているベンだが、最近はアルフォークが来ると魔法で畑の水やりを手伝わせたりしている。アルフォークが気付いているかどうかはわからないが、父親が自分の大事な野菜の世話の一部を任せるとは、スーリアからみると大きな態度の軟化だった。

「また畑の水やりを手伝わされるわよ?」

 ちょっと意地悪く言ったスーリアをアルフォークは口の端を上げて見下ろした。