信じられない思いでアルフォークはスーリアを見た。こんな状況にも関わらず、スーリアはアルフォークと目が合うと、嬉しそうに微笑んだ。
「スー……」
アルフォークの必死の訴え虚しく、試合開始の合図がされる。部下たちが襲いかかってくるのを感じ、アルフォークは咄嗟に、左手に剣を握った。
エクリードは目の前の男の底力に驚いた。
──強すぎるな。
五人相手に戦えと言ったのは、アルフォークに右手を使わせる必要に迫らせるためだ。
エクリードがスーリアからスーリアの花の別の力──治癒能力の事を聞いたのは昨日のことだ。早速、王宮の医務室に運び込まれた重症者の何人かに試したところ、確かに治癒魔法でも治せない症状すら治癒する力がある事が分かった。しかし、効き方には差があった。
口にしてすぐに効果が顕れたものもいれば、効果があまり見られないものもいた。そして、エクリードには、それは本人の意思に左右されているように見えた。例えば、足が動かない状態から見事に元通り動くように即座に回復した王宮の警備兵は、男手一つで幼い娘を養っていた。
だからこそエクリードは一芝居打った。スーリアの命が掛かっていると言えば、アルフォークは必ず全力で戦うと睨んだのだ。



