「スー」

 アルフォークが小さくスーリアの名を呼び、左手を伸ばしたので、スーリアはそっとそばに寄った。紫色の瞳が優しく細まる。少し震えているように見えた大きな手はスーリアの頬を撫で、髪を梳く。温かなぬくもりに触れたその途端に、楽しかった日の事が思い出されてスーリアの頬を涙が伝った。

「アル、私──」

──ごめんなさい。

 そう言おうとしたスーリアは、その前にアルフォークが発した言葉に言葉を失った。

「スーリア。俺は君を騙した。悪かったと思う。今日はその謝罪がしたくて、ルーに頼んで来てもらった」

 信じられない思いでアルフォークを見つめると、アルフォークは哀しみを湛えた目でスーリアを見返した。スーリアがなおも目を逸らさずにアルフォークを見つめると、アルフォークはスーリアに触れていた手を膝の上に置き、視線をスーリアから逸らした。そして、もう一度同じ事を言った。

「俺は君を騙した。利用しようとして、近づいた」
「アル? 何言っているの?」