「今確認しているのは、三角獣が三匹です」
「三角獣が三匹か。それ位ならなんとかなるだろう。もう一頑張りしてくれ。行くぞ!」
「はいっ!」

 さすがは訓練に訓練を重ねたエリート魔法騎士達だけある。誰も文句も言わず、疲れの色も見せずに付いてくる。あっという間に一匹目は仕留めた。だが、二匹目をしとめたところで、異常が起きた。

「何かが来ます!」

 部下の一人が焦ったように叫んだ。アルフォークはハッとしてそちらを見た。
 開きっぱなしの空間の歪みから何かが来る。
 黒光りした鱗、縦に開いた黄色い瞳孔、軍馬の数倍も大きな体……

「──サンダードラゴンだ」

 アルフォークは息を飲んだ。今日ニ匹目の最上級の魔獣。

「攻撃される前に行くぞ!」

 こっちを認識される前に先制攻撃して仕留めなければ、やられる。アルフォークは咄嗟にそう判断して叫んだ。

 無意識にスーリアの花が入った懐を鎧越しに手でなぞる。
 もう体力も魔力も限界に近い。
 無情に降り注ぐ雨粒を受けながら、アルフォークは薄墨のような天を仰ぎ見た。