空間の歪みとは、どのような場所にでも発生する可能性はある。
 大聖堂であれ、王宮であれ、例外は無い。しかし、王宮内で空間の歪みが発生したことはこれまでのルーデリア王国の歴史上、一度も記録が無かった。しかも、空間の歪みが発生するのは今日だけで四回目だ。こんなに多いことも滅多に無い。まさに、弱り目に祟り目だ。

 そして目にしたのがこの状況だ。
 驚くなと言う方が無理がある。

 破壊された宮殿のテラス、散らばったガラスや陶器。侍女や警備隊に怪我人が大量におり、治癒が間に合っていない。そして、拘束魔法を掛けられながらも雄叫びを上げる魔獣。びしょ濡れになりながら必死に対処している魔術研究所の筆頭魔術師達。魔術研究所の魔術師達は、攻撃魔法に長けていないのでせいぜい拘束魔法を掛けることしか出来ないのだ。

「魔獣は何匹ほど?」

 アルフォークは先に駆けつけていた部下に尋ねた。あたりを見渡したが、エクリード達聖魔術師はまだ来ていないようだった。