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 悪い予感というものは、概して的中するものだ。
 アルフォークとエクリード達は雨でびしょびしょに濡れた鎧やケープを身に着けたまま、馬を走らせていた。ただでさえさえ肌寒い季節なのに、頭から足まで全身びしょ濡れ。否が応でも体力は奪われる。

「流石に疲れたな……。もう一か所だ」

 エクリードは髪から垂れてきた雫を手の甲で拭うと、自分に言い聞かせるように呟いた。
 
 魔法騎士や聖魔術師達は雨の移動の際は、自身とその愛馬を包み込むように防御壁を張る。雨風に直接当たらないためだ。しかし、実際に空間の歪みのある地域に到着すれば、聖魔術師にとって防御壁は浄化の作業の邪魔になるし、魔法騎士も防御壁をずっと保ったまま魔獣と戦うことなどできない。結局、そこでびしょびしょになるのだ。

「殿下。あとどれくらいでしょうか?」
「そうだな。このまま南下して四キロと言ったところだ」
「南の外れの湿原ですね。急ぎましょう」