「リア、ほら」

 ポンと肩を叩かれ、見上げるとリジェルがパンの入った袋を差し出していた。スーリアはその袋を見た。いつもより膨らんでいる。

「リアの好きな芋のパンを多めに入れておいたから。あー、その……、これ食って元気だせよ」

 スーリアはリジェルを見上げた。リジェルは心配そうに、スーリアを見下ろしている。何も話してはいないが、リジェルはきっと、スーリアの元気がないことを敏感に察して、元気付けようとしているのだろう。
 
「うん。ありがとう、リジュ」

 スーリアはその袋を受け取り、小さく微笑んだ。そして、店の外に置いてある空のバケツを片付けると、とぼとぼと自宅へと向かう。

 自宅に戻ったスーリアは、庭にある花畑へと向かった。来週に迫ったメリノとスティフの結婚式に向けて、今はバラが沢山咲き乱れている。
 美しく咲く花を眺め、スーリアは少しだけ沈んでいた気持ちが浮上するのを感じた。この花を美しく飾り付け、姉夫婦の門出を祝福しよう。

 そのまま花の世話をしていると、ガタガタと馬車の車輪の音が遠くから聞こえてきた。顔を上げると、凜とした雰囲気の女性が荷馬車を操ってこちらへと向かってくる。

「キャロルさん、こっち」

 スーリアは馬を操るキャロルに向かって手を振った。キャロルはスーリアの花を受け取りに来たのだ。