スーリアはトレーに乗せられたパンを黙々と紙袋に入れた。

「ありがとうございました」

 料金を受け取ると、紙袋に入れたパンを手渡す。笑顔でお見送りすると、初老のお客様は人当たりのよい笑みを浮かべた。

「また来るよ」
「はい。お待ちしております」

 小さく手を振り、その姿が見えなくなったところで、スーリアはハァッとため息をついた。

 王宮の花畑にはしばらく来ないようにと突然アルフォークに言われ、早二週間が経つ。スーリアは理由を知りたかったが、アルフォークははっきりと理由を言ってくれなかった。
 今、スーリアの花は凛々しい女性騎士が自宅まで取りに来る。だから、スーリアはアルフォークにこの二週間会えずにいた。

──会いたいな。

 たった二週間会えないだけで、とても寂しい。あのアメジストのような瞳で笑いかけて欲しい。大きな体で優しく抱きしめて欲しい。
 スーリアには、なぜ自分が急に王宮に行くことを禁じられたのかが分からなかった。なにか、不調法をしてしまったのだろうか。