「納得いきませんわ。まず、そのキャロルという魔法騎士はこともあろうに戦闘中にパニックを起こして、庇ったアルが大怪我したと聞きしましたわ。一介の騎士が王都の魔法騎士団長であるアルの怪我の原因を作るなど、職務怠慢以外の何ものでもありません」
「部下の技量を見極められなかったアルにも責任がある。それに、大怪我ではなくて軽微な火傷だ。俺が治した」
「訓練中に、アルに必要以上に構って貰っていました。私、見ましたもの」
「訓練なのだから、必要なのだろう。お前が解雇を申し付けたキャロルには、その話は撤回だと伝えておいたからな」

 エクリードは睨んでくるプリリア王女に素っ気なく言い放った。

「その薬草園のミリーという女と花畑管理人のスーリアという女は、水汲みをアルに手伝わせていたそうですわ。水汲みは彼女達の仕事なのに、職務怠慢です」
「俺はその場に居合わせたが、あれは重い水が入ったバケツを持ってふらつく彼女達を気の毒に思ったアルが自分から申し入れて手伝ったんだ。彼女達のせいではない」
「しかし、手伝いを申し入れられても断るべきですわ」
「魔法騎士団長に言われて断ることなど、平民の彼女達に出来るわけがないだろう。お前はアルが、重い水を持ちふらつく女性を見かけても知らんぷりするような気の利かない男だと思っているのか?」