そして先ほど。
 ふと思い立ったプリリア王女は、アルフォークに会いに魔法騎士団の訓練所を訪れた。そこにいたアルフォークは若い女性騎士を指導しており、プリリア王女が来たにも関わらず、挨拶だけそこそこに、あとは彼女につきっきりだった。

 王女である自分が蔑ろ(ないがし)にされ、腸が煮えくりかえる思いだ。侮辱された気分だった。

「ちょっと」

 プリリア王女は扇を片付けていた侍女達を呼ぶ。主の不機嫌な声に侍女達はびくりと肩を震わせた。互いに目配せしながら恐る恐る顔を上げる。

「私は美しいでしょう?」
「世にまたと居ない美姫にございます」
「当然よ。──お前は鼻が上を向いていて不格好だわ」

 プリリア王女はその侍女を一瞥すると、ふんと鼻で笑った。侍女はサッと顔色を無くし、目を伏せる。
 プリリア王女は目の前の鏡を見た。
 そこに映るのは金糸のような美しい髪を結いあげた、色白の若い娘だ。高すぎず低すぎない鼻はすっきりと鼻梁が通り、ぷるんとした唇はピンク色。透き通るような肌は染み一つなく、頬はバラ色に染まっている。そして、アーモンド型の大きな瞳は彼女の気性の荒さを顕すかのように目尻が釣っていた。