面白くない気分のまま自室に戻ったプリリア王女は、部屋に入るや否や持っていた扇をバシンとドレッサーに叩きつけた。その衝撃で扇は割れ、破片があたりに飛び散る。侍女達はオロオロとその様子を見つめていた。

「何もたもたしているの! さっさと片づけて!!」

 短い命令に慌てて侍女達が散らばった部品を拾い集める。プリリア王女はその様子を憎々しげな表情で眺めていた。

 プリリア王女の目論見通り、先日アルフォークに伯爵位が授与された。

 プリリア王女としては本当は侯爵位がよかったが、父親と兄に流石にそれは無理だと言われて泣く泣く諦めた。もっとごねることも可能だったが、アルフォークの活躍ぶりを考えれば今は伯爵位でもゆくゆくは侯爵位を賜るのも可能だと考えたことも、大人しく引き下がった理由の一つだ。

 その本来なら納得いかない伯爵位ながら、プリリア王女はアルフォークに自分が降嫁してやることを匂わせた。
 アルフォークは泣いて喜ぶべきだ。なのに、アルフォークは感謝するどころかプリリア王女を隣国に嫁ぐように諭してきた。