アルフォークは言葉を切り、スーリアを見つめた。

「スーは以前、俺が貴族であることを気にしていた。だが、俺は爵位があろうがなかろうが、スーが好きだ」

 突然『好きだ』と言われて、スーリアの頬はバラ色に色づいた。アルフォークは真剣な顔をしてスーリアを見つめている。

「うん、私もアルのことがすごく好き。爵位があろうがなかろうが変わらないよ」

 照れながらも伝えると、アルフォークは嬉しそうに笑みを浮かべてスーリアを抱き寄せた。スーリアはおずおずとアルフォークの背に腕を回す。とても広い背中だ。黒い騎士服越しに、体温の温かさを感じた。

──私、すごく幸せ者だな。

 スーリアは抱きしめられたまま、そっと目を閉じる。服越しに、アルフォークの規則正しい胸の音が聞こえた。近くにアルフォークがいて、自分を好きだと言って抱きしめてくれる。
 それだけで、まるで世界がバラ色になったかのような幸福感に包まれた。

 幸せな二人は宮殿のテラスに人影があったことにも、そして、その人影が自分達をじっと見ていたことにも気付かなかった。