エクリードは口の端を持ち上げてニヤリとしたが、すぐに真顔に戻った。

「アル。父上にスーリアの話をした」
「陛下はなんと?」
「王国に近い場所に彼女を捕まえておけと。意味がわかるか?」
 
 アルフォークは首を横に振った。 

「つまり、彼女に安全かつこの国のために力を貸したくなる立場を与えて繋ぎ止めろということだ。例えば、俺の妻だな。兄上は次期国王の立場上、隣国の王女を娶るのが望ましいが、俺は隣国の王女である必要はない。だが、国益に繋がる妻を娶る駒にはなる」

 アルフォークは信じられない思いでエクリードを見た。エクリード殿下の妻にスーリアをなど、全くもって予想外だ。

「……承服致しかねます」

 アルフォークの低い声色に、エクリードは苦笑する。

「アルの気持ちは分かっている。それに、スーリアもアルに惚れているのだろう? お前達の様子を見れば分かる。父上はこの件を俺に任せて下さると言った。俺は彼女を繋ぎ止める枷は、アルでもいいと思っているんだ。だが、きちんと繋ぎ止めろ。お前がダメなら俺が行く。なぜなら、俺はこの国の王子だからだ」
「分かりました。ただ、枷という言い方はいかがなものかと」
「ものの例えだ。そう怒るな」

 エクリードはそう言うと、憮然とした表情のアルフォークの肩をポンと叩いた。