アルフォークはハァッとため息をついた。

「俺はプリリア王女殿下とは結婚出来ません。伯爵位はありがたいですが、王女殿下を娶るにはやや見劣りしますし、そもそも王女殿下を男女関係の相手として見たことはありません。それに、俺は……」
「スーリアを愛している?」

 言おうとした台詞を先にエクリードに言われ、アルフォークは驚いて目を見開いた。エクリードは口元に微笑みを浮かべ、アルフォークを見ていた。

「あの舞踏会の日、スーリアに会った。無用心に一人で庭園にいたから、あの場で隠れて待つように言ったんだ。彼女は舞踏会の会場を眩しそうにみつめていた。それに、ドレスに憧れていると言っていた。だから、ドレスを着せてお前とルーエンを驚かそうと思ったんだ。ダンスは踊れないと言っていたが、足を痛めたと言えばなんとでもなるしな。ところが、手筈を整えて戻ったらスーリアには先客がいた」
「……ご覧になっていたのですか?」
「まぁな。あんなに楽しそうにダンスを踊るアルは初めて見た。だから、きっとアルは彼女に惹かれているのだろうと思った」

 アルフォークは視線を少し彷徨わせる。庭園の奥だったし、まさか見られているとは思っていなかった。 

「なに。責めているわけてはない。ルーが心配していたとおり、アルには今まで良縁がなかった。あの子は平民だが、この世にまたとない聖なる力を持つ娘だ。悪くない話だ」