その話を聞いたとき、アルフォークは思わず眉を顰めた。聞いた内容があまりにも予想外だったからだ。

「殿下。今、なんと?」
「だから、近々陛下からアルに褒章の話がある。伯爵位だ。今朝そう言っていたから、アルに伝えられるのは恐らく次回の謁見の時だな」

 アルフォークは無言でエクリードを見つめた。褒章の話があるかもしれないと言うのは、舞踏会の日にプリリア王女から聞いた。しかし、その内容が予想外だ。

「伯爵位? 男爵や子爵ではなくてですか?」

 アルフォークが訝しむのも無理はなかった。
 褒章に爵位を賜ることは時々ある。しかし、あったとしても男爵、せいぜい子爵位だ。元々爵位を持っていた人間の爵位が上がるならまだしも、突如爵位を持たない人間が伯爵位を賜るなど異例だった。

「そう穿(うが)った見方をするな。それだけ陛下がアルを高く買っていると言うことだ。しかし、リアが心配だな。お前が爵位を賜ったら、きっと自分が降嫁したいと言い出すだろう」

 エクリードの言葉に、アルフォークは頭が痛くなるのを感じた。

 先日の舞踏会でプリリア王女をエスコートしたせいで、既に貴族連中の間ではアルフォークとプリリア王女が主従関係を越えた禁断の恋仲であると誠しやかに囁かれている。

 そこで更にアルフォークが伯爵位を賜ったら?

 きっと、プリリア王女を降嫁させるための下準備だと邪推されることは目に見えている。