「どうだい? スーリアも舞踏会に出たくないか?」
「舞踏会に? 綺麗なドレスには憧れますが、私はダンスを踊れませんし、平民ですから。見ている位がちょうどいいわ」

 スーリアは少しだけ首を傾げて見せる。

「エリクさんはとても素敵ですね。似合ってます。まるで王子様みたい」

 今日の衣裳を着たエリクは物語に出てくる王子様のようだった。スーリアが褒めると、エリクは少し口の端を持ち上げてから、何かを考えるように顎に手をあてた。

「憧れるなら、着てみようか。俺が何とかしてやるから。ちょっと待っててくれ。くれぐれも人に見つからないように隠れていてくれ」
「え? ちょっと? エリクさん??」

 スーリアが呼びかけるのがまるで聞こえないように、エリクは「すぐ戻る」と言って宮殿の方向に去っていった。

「行っちゃったわ。どうしよう……」