*** 


 スーリアは朝から大忙しだった。前日に王宮お抱えの装花師から、今日は舞踏会があるのでスーリアとミリーも装花を手伝うようにと言われていたのだ。

 まだ日が昇り始めたばかりの朝早くから集まって花を摘み取り、皆で手分けして宮殿の中を美しく飾ってゆく。
 国王陛下主催の舞踏会は王室の威信がかかっており、万に一にも花がしおれていたり崩れていることは許されない。細心の注意を図りながら作業を進める必要があり、一つ一つの装花にいつも以上に時間がかかった。

「ふぁー、疲れた。やっと終わったねー。でもこの後も長いんだよねー」

 全ての装花が終わり、ミリーはグッと両腕を上に伸ばして伸びをした。
 一日中前かがみで作業していたので、背中がポキッと鳴る。スーリアとミリーの仕事はこれで終わりではない。舞踏会の最中に酔って装花を崩したり、外に出て庭園を荒らす人は必ず一人はいる。そういう人に対応するために、舞踏会が終わるまではいつでも花を直せるように控えているのだ。

「もう招待客の方がいらしているのね。素敵だわ」

 スーリアは物陰から廊下を歩く人々を眺めて、うっとりと呟いた。