今日の舞踏会は、アルフォークは従姉妹の子爵令嬢をパートナーに参加する予定だった。ところが、参加直前になって、従姉妹の子爵令嬢が病に伏せって参加できなくなったと言いだした。そして、時を合わせたかのように降って湧いたプリリア王女のエスコート役。

『娘も本当に残念がってるんだが、急病ではどうしようもないから』

 心底申し訳無さそうにそう告げた叔父の子爵は、心なしか視線が泳いでいた。確証はないが、十中八九で何らかの圧力を受けたのだろう。

 プリリア王女の着ている艶やかなシルクのドレスは、アルフォークの髪と同じ水色だ。

──これを見た貴族連中はどう思うだろうな? 

 きっとプリリア王女の嫁ぎ先の有力候補がアルフォークだと睨んで、余った爵位のある貴族や子供のいない貴族がこぞって自分を養子にしたいなどと騒ぎ出すのは目に見えている。

 アルフォークはこれからの数時間を思って、気持ちが沈んでくるのを感じた。