今日は王宮で舞踏会が行われる。
 一年に一度、宮殿の大広間を開放して行われるこの舞踏会はとても大規模なものだ。国中の貴族に国王の名で招待状が送られる。当然、欠席する者は殆どおらず、どうしても参加出来ない場合は代理が立てられる。

 アルフォークは自宅で上着に袖を通すと、ハァッと大きくため息をついた。

 アルフォークは今日の舞踏会に、兄夫婦の代理として出席することになっている。しかし、行きたくないのだ。かと言って、伯爵家であるアルフォークの実家が国王からの招待を無碍にできるはずもなく、行かないという選択肢はない。

──行くか。

 アルフォークは鏡の前に立ち首回りを整えると、重い腰を持ち上げて部屋を出た。