「確認するけど、猫で間違いないわね?」
「はい。猫でございます」

 マニエルは満足げに頷いた。
 マニエルが密かに入手したポーション。それは、人が動物の姿に変身出来るという魔法のポーションだ。ルーエンは猫好きなことは既に分かっている。どうせ変身するなら愛するひとの好きな動物になりたいというのは乙女心なのである。

「では、早速王宮に行くわよ! 薬草園の場所は調べたし、例の女はたいてい夕方頃にいるらしいのよ」

 マニエルは侍女の差し出したポーションをむんずと掴むと早速出かける準備を始めた。今から愛しの婚約者であるルーエンに横恋慕する、そのふざけた女の姿を拝みに行ってやろう。マニエルは並々ならぬ闘志を燃やして馬車に乗り込んだのだった。

 王宮の入り口近くに着いたとき、侍女は心配げにマニエルを見つめた。

「お嬢様……。やっぱりやめた方が……」
「何を言うの! ルーエン様が他人に奪われるのをただ指を加えて見ていろと?」
「でも、噂話ですし。ルーエン様は最近よくお嬢様の所にいらっしゃいますし、花もプレゼントして下さいますし」
「火のない所に煙は立たないのよ。とにかく確認してくるわ」
「じゃあ騎士団長との噂も……」
「?? なに?」
「いえっ! 何でもありませんわ。お嬢様……お気を付けて行って下さいませ」
「わかったわ」