「となると、聖魔術師や魔法騎士の団員にこの花を御守りに持たせておけば、怪我しないということか?」
「そうだね」

 聞き返したアルフォークにルーエンは頷いて見せた。

「それは凄いな」

 エクリードはルーエンの話を聞いて興奮気味に身を乗り出した。
 空間の歪みを正しに行くと、高確率で魔獣に遭遇する。彼らを討伐するのは魔法騎士の役目だが、常に危険がつきまとう。怪我も多いし、年に何人かは命を落とすこともある。それが花を身に付けておくだけで身の安全が確保できるなら素晴らしいことだ。

「これは世紀の大発見だ。なぜこのような不思議な花が生まれたのか、その理由をなんとしても解明しなければならない」

 普段は凛々しい顔に眉根を寄せて、第二王子のエクリードが花を片手に力説する。

 エクリードは右手に花を一輪高く掲げ、左手を胸に宛てると見えない女神に花を捧げるかのようなポーズをした。侍女の「きゃあ」と言う声が遠くから聞こえてくる。