転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~


「俺は確かに伯爵家の次男だ。だか、兄がいるので爵位は継げない。つまり、スーの義兄になるスティフと同じだ。『アル』とは呼んでくれないだろうか?」

 爵位を継げない貴族の子供は嫡男の居ない家庭の貴族令嬢の婿養子になるなどしない限り平民になることはスーリアも知っていた。
 正確に言うと義兄になるスティフもアルフォークも既に『魔法騎士』の称号を持つため、平民では無い。しかし、これは貴族とも少し異なる準貴族的な位置付けだ。

「わかりました。でも……すぐには難しいかもしれません」
「難しい?」
「だって、アルフォークさんは偉いですし、年上ですし、貴族ですし……」
「スー?」
「あ、アルは偉いし……」

 それを聞いたアルフォークは満足げに口の端を持ち上げて微笑んだ。『やっぱり無理です』と喉まで出かかっていたはずの言葉はその笑顔を見た途端に引っ込む。代わりに自分の胸の鼓動がトクンと跳ねるのを感じて、スーリアは咄嗟に目を逸らした。