スーリアは吃驚してまた顔を上げた。目が合ったアルフォークは困ったようにアメジストのような紫の瞳を逸らした。
「スーリアの愛称が『リア』なのは知っているが、『リア』は知人にそう言う愛称の者がいて……その、なんだ、スーリアとその者を同じ愛称で呼びたくないんだ。俺の事も『アルフォークさん』では無く、『アル』と呼んでくれ」
アルフォークにとっては『リア』はどうしてもプリリア王女を思い出してしまい、正直あまり呼びたくない愛称だ。しかし、先ほどのくせ毛の若者とスーリアが愛称で呼び合い、仲むつまじそうな姿をみて何となく自分もスーリアを愛称で呼びたいと思った。
「私のことは好きに呼んで下さって構いません。でも、私みたいな町娘がアルフォークさんを愛称で呼ぶなんて恐れ多いです。身分が違いますし……」
「スー」
隣を歩くアルフォークが足を止めたので、スーリアも立ち止まった。アメジスト色の双眸はまっすぐにスーリアを見つめている。二人の頬を爽やかな風が撫でた。



