アルフォークはにっこり微笑むと、手早く台車を逆さまにして鞍に結び付け、バケツを左右にぶら下げた。

「なんか、ごめんなさい……」
「いや、構わない。さあ、行こう」

 艶やかな漆黒の軍馬にロバのように荷物が括り付けらた様は相当異様だったが、アルフォークは気にする様子もなく馬の手綱を引きながら歩きだした。スーリアも慌てて後を追う。

「その猫は?」

 並んで歩いていると、アルフォークはスーリアが抱いているミアを見て尋ねてきた。スーリアはミアを両腕に抱いていた。

「最近、パン屋の前で拾ったんです。『ミア』って言います。もしかしたら元々の買い主さんがいるかもしれないと思って毎日一緒に連れて行ってるんですが、今のところ現れないですね」

 スーリアが腕に抱く猫の頭を撫でると、猫は嬉しそうに咽をならした。

「先ほどの彼は恋人かな?」
「え? リジュですか?! ち、違います!」
「そうか。とても親しそうに見えたから」