「ベン殿が育てた野菜も保ちがよいのか?」
「そんなことは無いですね。でも、スーリアが育てると野菜が育つのも早いです。ほら、あそこ。あの一画だけ野菜の苗がしっかり育っているでしょう? でも、花の保ちがいいからなかなか実にならないのが悩みですね」

 ベンは苦笑しながら少し離れた畑の一画を指さした。確かに、そこだけまわりの畑に比べて作物の背が高い。

「そうか。ありがとう」

 アルフォークはベンに礼を言うと、自身の乗ってきた馬に素早く跨がった。

 レッドハットベーカリーはその名の通り赤い三角屋根が目印のパン屋で、店を知らなかったアルフォークでもすぐに見つける事が出来た。
 店の軒先には空のバケツが幾つか置いてあり、馬を降りて店の中を覗くと、エプロン姿のスーリアがいるのが見えた。
 今日は髪の毛を頭の斜め下で一つのお団子にしている。スーリアは、笑顔で白色のコック帽を被った若い男と話していた。