スーリアは自宅に帰ると、すぐに農園で野菜の世話をしている父親のベンのところに向かった。

「父さん」

 スーリアが呼びかけると、父親は土を耕す手を止めて日焼けした顔を上げた。

「お帰り、スーリア。今日もたくさん売れたかい?」
「ええ、とてもよく売れたわ。リジュが作ったうちのお芋を使ったパンを分けてもらったの。とてもおいしそうだから、おやつに食べましょうよ」
「うちのお芋を? それは楽しみだ」とベンは目尻に皺を寄せた。

  スーリアはチラリとレッドハットベーカリーから押してきた手押し車を見た。父親の機嫌がよさそうなことを確認して、本題を持ち出した。

「あの、父さん。お願いがあるのだけど……」
「お願い? 今度はなんだい?」
「猫を飼いたいの。とても可愛いのよ」

 スーリアはパタパタと走って台車のところまで行くと、先ほど連れて来たばかりのトラ猫のミアを抱き上げた。