「私が、蛇神様と交わした約束。それは、25歳になったら蛇神様の呪いで死ぬ事。そして、死んだ体を蛇神様に差し出す事です。そして、その代わりに私が生まれ変わっても永遠に過去の記憶を受け継ぎたい。ずっと矢鏡様を覚えていたい。そう蛇神様と約束しました」
 「………人身御供を望んで生き続けたのか?」
 「はい」
 「………それがおまえの願いで、俺の存在のため?」
 「私のためです。私が、矢鏡様に会いたかった、死んであなた様の事を忘れてしまうのが怖かったのです。矢鏡様はずっと神様として生きて行かれるのに、私は違う存在になってしまう。忘れてしまうのが悲しすぎました」
 「どうして、俺は覚えていない!?そんな事など、私は知らないぞ!」


 信じられない事実。
 それを受け入れられない。そう、その間ずっと矢鏡は神としてこの世の存在していた。それなのに、どうして紅月の魂に気付かなかった。そんな事があるはずもない。
 けれど、疑問もずっとあった。昔の事を思い出そうとすると記憶に靄がかかり人間の頃の思い出しか残っていないという事が。その間は何百年という長い期間なのに、だ。

 そこでハッとする。
 記憶を操作されている。紅月と同じように?矢鏡の記憶に何らかの力が働いてる?そんな事が出来てしまい、そうする事で利益になる存在。そんな奴は一人しかいない。


 「ま、まさか。俺にも呪いが………」
 「………申し訳ございません。これの事実を知れば矢鏡様がその呪いを祓ってしまう可能性があると考え、矢鏡様の記憶も蛇神が封印しております。私が生まれ変わる間の短い時間。矢鏡様の力はない状態になってしまう。その時に力を施している、と話している」
 「そ、そんな。紅月はあの時からずっと俺を消滅させないために、参拝しつづけているというのか?そんな、………信じられない」
 「でも、本当なのです、矢鏡様。いえ、左京様」
 「っ………。その名を知っているのか………」