「もしその呪いが蛇神がしたものであったのならば、人間はもちろんの事、おまえのように微量にしか力を保持していない神では祓う事も弱める事も無理であろうな。私であっても、神の呪いというのは骨が折れる」
 「やはり、そうなのか。……だが、何としても助けたいのだ。何でもいい、知恵を授けてはくれないか?」
 「それは難題ではない。無理なのだ」
 「………そんな」


 方法も助ける可能性もない。自分より高貴な存在である神にそう断言されると、矢鏡は頭の中が真っ白になった。
 どうすればいい?紅月が苦しんで弱り果てて死んでいくのを見ているだけなのか。
 大切にしたいと、思った人間を、#また__・__#守れないのか。
 
 悔しさが込み上げてきて、矢鏡は握りしめていた手が震えるのを感じた。

 そんな様子を見て「おまえは面白いな」と龍神が珍しいものを見るように笑っていた。
 助けられない悔しさと情けなさで怒りすら感じていた矢鏡は、その言葉で頭に血が上っていくのがわかった。


 「……何が面白い?」
 「人間一人が死んだとして、何をそんなに悔しがっているのだ。見たところ、あの数人はお前を慕っているものいるのではないか?すぐに消滅などしないだろうに」
 「そんな事はどうでもいいんだ。俺はあいつを助けたいだけだ」
 「その理由とやらが知りたいんだ」
 「話す意味などないだろう。助けられないのだからな」


 そう言って、矢鏡はその神社に背を向けてさっさとその場から去ろうとした。始めは全く興味を持っていなかっららしい龍神だったが、その背中に向けて引き留める言葉を発した。