十二、





 不思議な女だと思った。
 罠にひっかかるような森もしらない身分の高い、ただ守られるだけの女。見た目では誰もがそう思うぐらい可愛げのある容姿と服装なのに、口を開けば年上の男にも負けないぐらいの威圧的な部分がある。一言で言えは強い。
 そして、自分が「死ぬ」とまで伝えてきた。それなのに、怯えもせずに、まっすぐに矢鏡の目を見つめている。
 化け物だと言われ蔑まれた矢鏡の事を。

 矢鏡は自然と頭巾に手を伸ばしていた。
 頭巾が落ちてしまわないように、ギュッと頭を手で押し付ける。



 「死ぬって。どうして」
 「私も話すから、あなたが知っている事教えて。それが条件」


 目の前の女は、矢鏡が白無垢の女を知っていると確信しているのだろう。
 崖から飛び降りた少女の事を気になっていたのは確かであるし、この女が話している事も気になる。
 話すしかない。
 そう決めた矢鏡は重い口を開けた。


 「何を話されても後悔しないな」
 「しないわ。たぶん、大体は察してる事だから」
 「なんだ、それ……」
 「いいから、教えてっ!」